DEVELOPER’s BLOG

技術ブログ

85% が「自社でも実現できる」と回答──AI エージェントがデータを見て動く時代の業務変革

2026.05.28 竹中 涼香
AWS データ分析 生成AI
85% が「自社でも実現できる」と回答──AI エージェントがデータを見て動く時代の業務変革

アマゾンジャパン品川オフィス


  1. はじめに
  2. AI BPRとは
  3. ワークショップの内容
  4. 参加者の声
  5. 組織への展開と本格導入


1.はじめに

売上や現場の数字を見ながら、次々と判断を下す毎日。「これAIでやってくれないかなぁ」と感じたことはありませんか。

生成 AI のニュースは毎日のように流れてきますが、自社の業務で「使える」という実感を持てている方は、まだ少ないのではないでしょうか。業務の中で日々判断を重ねている方ほど、目の前の業務を AI が肩代わりしてくれる姿は具体的にイメージしにくいものです。

こうした課題に向き合う手法として、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS Japan)が今年3月に提唱した手法が AI BPR(AI を前提とした業務プロセスの再設計)です。AWS Japan がすでに複数の大手企業で実施した AI BPR では、参加者の81%が「AI エージェントによってビジネスモデルが変わると確信した」と回答するなど、確かな成果が出ています。 ※ AI BPRの紹介はこちら:Amazon Web Services ブログ/AI 駆動の業務変革手法 :「課題は何ですか?」と聞くのをやめた日

アクセルユニバース(以下、AUC)は、AWS Japan と共催で AI BPR ワークショップを継続的に開催しています。今回は2回目の開催で、Data Analytics Agent をテーマに 7 社 30 名のお客様にご参加いただきました。終了後アンケートでは、参加者の 85% が「AI エージェント前提への業務変換は実現可能」、90% 以上が「ワークショップ全体に満足」、60%以上 が「経営層に報告したい」、つまり全社を巻き込んで実施する価値があると回答しています。

本記事では、当日の内容と参加者の声、そしてワークショップを起点に何を変えていけるのかをご紹介します。


2.AI BPRとは

AI BPR とは、ビジネスモデルや業務プロセスに対し、AIエージェントが業務の一部を担うことを前提に組み替える4〜5 時間のプログラムです。

従来型の BPRは、「何が問題か」から出発するアプローチであり3〜4 割しか成功してこなかったと言われています。 理由は次の3点に集約されます。

  • 問題から始めると、人は防衛的になる
  • ヒアリングと資料化の往復で、変革の主体が現場から奪われる
  • AI 導入は本来「適応課題」なのに「技術課題」として扱ってしまう


また、「とりあえず AI を導入してから業務を考える」というデジタルファースト型のアプローチでも、現場で定着せずに止まってしまうケースが多くあります。AI BPR は、こうした失敗パターンを回避するために設計されています。

これまでの「業務改善」や「DX」と AI BPR が決定的に違うところは、既存業務を効率化することにとどまらず、「AI エージェントが業務の一部を担う」ことを前提に、仕事の組み立てそのものを設計し直すという点です。

特徴は大きく 4 つあります。

  1. 強み起点:問題点を洗い出すのではなく、自社が何で価値を出せているか、強みは何かから出発する
  2. 対話的アウトプット:AI と対話しながら、その場で成果物を作成する(持ち帰って資料化する時間を必要としない)
  3. 実用性の実証:実データを使って、明日から本当に使えるかをその場で検証する
  4. 再現可能性:進め方がパッケージ化されており、特定の人の職人芸に頼らず一定の成果が出せる


たとえば「強み起点」は、「クレーム対応が遅い」という問題から出発するのではなく、「当社の強みは常連客のリピート率の高さ。この強みをさらに伸ばすために、AI に何を任せるか?」と問い直す。問題ではなく、もっと伸ばせる余地に目を向けるからこそ、参加者の議論がポジティブに前進します。

そして進め方は、Observe(業務フロー可視化)・Shift(AI 委譲判断)・Simulate(プロトタイプ検証)・Forecast(展開計画策定)の 4 ステップ。「見て、決めて、試して、計画する」というシンプルな流れに沿って、半日で業務変革の第一周目を回します。

kiro_start


3.ワークショップの内容

今回のワークショップは、参加企業ごとに事前に決定した自社業務を題材に、AI BPR を体験していただくことを目的に、座学とハンズオンの2部構成で実施しました。

成果物として、参加企業様には次の2点を持ち帰っていただきました。

  • 実際に動くデータ分析エージェント環境
  • 「明日からどの業務をどの AI エージェントに任せ、そのことで自分たちのどんな強み・価値が強化されるのか」というストーリーがまとまった資料


当日の流れは以下の通りです。各ステップの間で参加者が迷わず進められるよう、環境のデプロイは AI エディタ Kiro との対話で完結する設計とし、事前にデータ取り込みの動作確認を済ませた状態でワークショップを開始しました。

パート 時間 ステップ 内容
ハンズオン 13:05〜13:20 Step 0 D360 デプロイ(Kiro との対話で AWS 上に環境を構築)
座学 13:20〜13:50 - AI BPR・D360 紹介(セミナー形式)
ハンズオン 14:00〜14:10 Step 0.5 D360 への CSV インポート・初期化(自社データの取り込み)
ハンズオン 14:10〜15:00 Step 1 Observe(業務フローの可視化・業務の棚卸し)
ハンズオン 15:00〜15:50 Step 2 Shift(AI に任せる業務を決定)
ハンズオン 15:50〜16:55 Step 3 Simulate(D360 プロトタイプを試す)
ハンズオン 16:55〜17:15 Step 4 Forecast(本日のまとめ/AI Agent 展開計画の作成)
- 17:15〜18:00 - クロージング



3-1.第1部:座学パート

ハンズオンに入る前に、AI BPR の考え方と、当日構築する Data Analytics Agent についての座学セッションを実施しました。

3-1-1.AI BPR vs 従来型BPR とその理由

AI BPR セッションの様子
座学セッションはオンラインセミナー形式で行いました。

ぼかし済み.webp

アクセルユニバース株式会社

竹中 涼香


AUC は、AWS Japan が提唱する AI BPR について公式のトレーニングを受け、AI BPR ワークショップを提供しています。

セッションでは、従来型 BPR の3つの失敗理由(問題起点/ヒアリング往復/技術課題扱い)と、それに対して AI BPR がどう答えているかを対比しながらご説明しました。

ここで大切にしているのは、AI BPR を「今日限りのワークショップの方法論」として伝えるのではなく、参加者ご自身が社内で AI 活用を進める際の思考の型として持ち帰っていただくことです。そのため、対比はあえてシンプルな表現に絞り込み、社内で説明する場面を想像していただきながら進めました。

従来型 AI BPR
問題から始める 強みと顧客価値から強化策を考える
ヒアリング→資料化の往復 AIと対話しながらその場で成果物を作成
技術的にできるかが重視される 実データで明日から使えるかを検証
個人のスキルに依存 パッケージ化で属人性を低減


AWS Japan 様が実施した AI BPR では、すでに複数の大手企業で確かな成果が出ており、顧客満足度は 5 点満点で 4.86、参加者の 81% が「AI エージェントによってビジネスモデルが変わると確信した」と回答しています。今回のワークショップでも、こうした手法を単に説明するのではなく、参加者の皆様ご自身に体験していただくことを大切にしています。

3-1-2.本日の構築対象「Data Analytics Agent(D360)」のご紹介

ハンズオンの題材は、Discovery360(以下、D360)と呼んでいるデータ分析AIエージェントです。「データ分析の依頼を、SQL もダッシュボード操作もなしに、日本語の対話だけで完結させる」ことを目指して開発されました。

たとえば「先月、関東で離反した顧客の特徴を教えて。対策を検討して。」と入力すれば、その場で答えが返ってきます。さらに管理者向けの画面では、どのデータを使うか、どのような目的で使用するか等、自社の業務に合わせて調整することができます。

D360ユーザ画面1 2026-05-26 14.06.01.webp


D360ユーザ画面22026-05-26 14.03.20.webp

構成はシンプルで、Web の画面、AI エージェント、データベースの 3 層で成り立っています。ユーザーは聞きたいことを日本語で入力するだけ。AI が裏でデータを取得・集計し、答えを返してくれます。SQL も、複雑なダッシュボード操作も必要ありません。

Data Analytics Agent の構成

スクリーンショット 2026-05-21 12.23.34.webp

D360 はオープンソースとして公開されており、構築方法は GitHub からご確認いただけます。Discovery360 (D360) - AWS Samples

ワークショップでは、Observe で業務を見て Shift で AI に任せる範囲を決めていく思考の流れを通じて、この D360 をご自身の業務・目的に合った仕様に仕上げていく、という流れで進めました。

3-2.第2部:D360構築とAI BPRハンズオン

後半は、実際に D360 を構築しながら AI BPR の 4 ステップを体験するハンズオンを実施しました。

IMG_8952.webp
IMG_8955.webp
IMG_8956_ぼかし.webp


参加企業ごとに部屋を分け、それぞれのチームで議論を深めながら構築を進めていただきました。

今回のワークショップで大切にしたことは、「自社の環境で、自社のデータで、AI エージェントが応答する」体験を、説明や事例紹介ではなくご自身の手で作っていただくことです。実データをインポートし、AI に質問を送り、精度を調整する、というサイクルを実際に回していただきました。

各社の議論を覗いていると、印象的な変化が起こっていました。最初は「本当にうまく答えてくれるのか」と慎重に質問を送っていた方が、何回かのやりとりの後に「これなら現場で使える」と表情が変わる。ある参加企業では、Shift のステップで「これは AI に任せたいけど、ここは絶対に人が判断したい」という線引きが、メンバー間でその場で言語化されていく場面も見られました。

ハンズオンの最後には、ご自身の業務に AI エージェントを実装するための展開計画を、AI との対話を通じてその場で作成いただきました。


4.参加者の声

ワークショップ終了後、ご参加いただいた 30名の皆様にアンケートをご協力いただきました。

  • ワークショップ全体満足度:90% 以上
  • 進行・フォロー満足度:85%以上
  • 「AI エージェント前提への業務変換は実現可能」:85%
  • 「この内容を経営層に報告したい」:63% 

特に注目したい部分は、最後の結果です。参加者の6割以上が「この内容を経営層に報告したい」と回答されました。自分のチームで試すだけでなく、会社全体で取り組む価値があると感じていただけたことが、このワークショップの一つの成果だと考えています。

アンケートでは以下の声をいただきました。(一部抜粋)

  • 他業務でも転用できるノウハウを伺えた。
  • 根本的な課題がかなりクリアになった。
  • 質問に答えるだけで AI エージェントの作成・動作確認ができるのが新鮮だった。
  • 言語化や可視化のスピードが、人手とは比にならない。
  • AI で業務整理を進める過程そのものがとても参考になった。


「業務の言語化に AI が想像以上に役立つ」「自社の業務にどう AI を組み込むかが具体的にイメージできた」といった感想もあり、AI BPR の考え方が実体験を通して伝わっていたことがうかがえました。

また、「次のステップで必要な支援」としては、自社データを使った検証が 56%、他社事例の共有が 41%、業務部門向けデモ・勉強会が 30% と、当日の気づきを自社の実データへの適用に進めたいというご意向を、多くの方から頂戴しました。

5.組織への展開と本格導入

​​「ワークショップ当日は盛り上がったが、結局その後動かなかった」――AI 活用の取り組みでよく聞く話です。なぜそうなるのか。多くの場合、原因は次のどちらかに偏ってしまうことにあります。

  • 計画偏重:きれいな展開計画はできたが、実装が伴わず絵に描いた餅で終わる
  • 実装偏重:技術的には動くものができたが、業務との接続が弱く現場で使われない

AUCでは、AI BPRの実践とAWS上での構築、どちらも行っています。当日作成された展開計画をお客様の状況に合わせて実装フェーズに接続し、業務での定着まで伴走することができます。今回のD360はもちろん、他テーマでも同様にご支援が可能です。

一例ですが、3か月程度の PoC を通して、

  • 自社データでの検証
  • 活用シナリオの検討
  • 業務への定着化

を進めることも可能です。

AI の活用が重要であることは感じていても、

  • どこから始めればよいのか分からない
  • 何を作ればよいのか分からない
  • 経営層や現場を巻き込んでどう進めればいいか分からない

という方も多いと思います。

そうした段階でも、課題整理から一緒に検討させていただきます。本記事をきっかけに、AI BPR や D360 にご関心をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

AUCへのお問い合わせ

関連記事

データと現場の声をAIエージェントが分析!「SMART」で作る新しい店舗運営のカタチ

はじめに 環境構築手順 Store Manager Agentで実現できること まとめ 1.はじめに 店舗運営において、こんなお悩みはありませんか。 売上データは見ているが、次に何をすべきか判断に迷う 売場づくりや品揃えが、どうしてもベテラン頼みになってしまう 在庫・売上・時間帯など、考えるべき要素が多すぎる 数字の振り返りはしているものの、改善アクションに落とし込めない こうした課題は、特定の業種だけのものではありません。 例えば、 ス

記事詳細
データと現場の声をAIエージェントが分析!「SMART」で作る新しい店舗運営のカタチ
AWS データ分析 生成AI
システムリプレイスの進め方ーAI駆動開発で

はじめに 開発フローと注意点 まとめ 1.はじめに 現在、多くの企業で「今動いているシステムをどうするか」という課題に直面しています。長年使い続けてきたシステムは、業務に深く根付いている一方で、技術的な老朽化やブラックボックス化が進み、手を入れること自体が難しくなっているケースも少なくありません。既存システムの設計書や仕様書が存在しない、"触れないシステム"が現場に残り続けているのが実情です。 しかし一方で、こうしたシステムは企業にとって重要

記事詳細
システムリプレイスの進め方ーAI駆動開発で"触れないシステム"を再構築する方法
生成AI
AWS Japan様と共催ワークショップ AIエージェントText2SQLでデータ分析

アマゾンジャパン品川オフィス3階 森のようなアトリウム はじめに Text2SQLとは ワークショップの内容 参加者の声 PoCから本格導入まで 1.はじめに 営業担当から突然、「この商品の半年分の売上推移のデータください」と言われ、思いがけないタイミングでデータ集計に時間を取られてしまう--。そんな依頼を様々な部署から受け、毎日追われている、というご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか? こうした課題を解決する手段として注目

記事詳細
AWS Japan様と共催ワークショップ AIエージェントText2SQLでデータ分析
AWS 生成AI
PoCでは動いた生成AIが本番直前で崩れる理由 ― few-shotの限界 ―

はじめに 生成AIプロジェクトで起きがちなこと リリース前に起きる問題とよくある対応 本質的に必要なアプローチ おわりに 1.はじめに 「PoCではうまくいっていたのに、本番が近づくと急に問題が噴出する」 いくつかの生成AI案件を進める中で、この現象には共通する構造があることに気づきました。PoCでは「使えそう」だったものが、本番直前で「このままでは出せない」と判断されるのです。 原因はモデルの性能不足だけではありません。 多くの場合

記事詳細
PoCでは動いた生成AIが本番直前で崩れる理由 ― few-shotの限界 ―
コラム 生成AI

お問い合わせはこちらから