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技術ブログ
85% が「自社でも実現できる」と回答──AI エージェントがデータを見て動く時代の業務変革
アマゾンジャパン品川オフィス
1.はじめに
売上や現場の数字を見ながら、次々と判断を下す毎日。「これAIでやってくれないかなぁ」と感じたことはありませんか。
生成 AI のニュースは毎日のように流れてきますが、自社の業務で「使える」という実感を持てている方は、まだ少ないのではないでしょうか。業務の中で日々判断を重ねている方ほど、目の前の業務を AI が肩代わりしてくれる姿は具体的にイメージしにくいものです。
こうした課題に向き合う手法として、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS Japan)が今年3月に提唱した手法が AI BPR(AI を前提とした業務プロセスの再設計)です。AWS Japan がすでに複数の大手企業で実施した AI BPR では、参加者の81%が「AI エージェントによってビジネスモデルが変わると確信した」と回答するなど、確かな成果が出ています。 ※ AI BPRの紹介はこちら:Amazon Web Services ブログ/AI 駆動の業務変革手法 :「課題は何ですか?」と聞くのをやめた日
アクセルユニバース(以下、AUC)は、AWS Japan と共催で AI BPR ワークショップを継続的に開催しています。今回は2回目の開催で、Data Analytics Agent をテーマに 7 社 30 名のお客様にご参加いただきました。終了後アンケートでは、参加者の 85% が「AI エージェント前提への業務変換は実現可能」、90% 以上が「ワークショップ全体に満足」、60%以上 が「経営層に報告したい」、つまり全社を巻き込んで実施する価値があると回答しています。
本記事では、当日の内容と参加者の声、そしてワークショップを起点に何を変えていけるのかをご紹介します。
2.AI BPRとは
AI BPR とは、ビジネスモデルや業務プロセスに対し、AIエージェントが業務の一部を担うことを前提に組み替える4〜5 時間のプログラムです。
従来型の BPRは、「何が問題か」から出発するアプローチであり3〜4 割しか成功してこなかったと言われています。 理由は次の3点に集約されます。
- 問題から始めると、人は防衛的になる
- ヒアリングと資料化の往復で、変革の主体が現場から奪われる
- AI 導入は本来「適応課題」なのに「技術課題」として扱ってしまう
また、「とりあえず AI を導入してから業務を考える」というデジタルファースト型のアプローチでも、現場で定着せずに止まってしまうケースが多くあります。AI BPR は、こうした失敗パターンを回避するために設計されています。
これまでの「業務改善」や「DX」と AI BPR が決定的に違うところは、既存業務を効率化することにとどまらず、「AI エージェントが業務の一部を担う」ことを前提に、仕事の組み立てそのものを設計し直すという点です。
特徴は大きく 4 つあります。
- 強み起点:問題点を洗い出すのではなく、自社が何で価値を出せているか、強みは何かから出発する
- 対話的アウトプット:AI と対話しながら、その場で成果物を作成する(持ち帰って資料化する時間を必要としない)
- 実用性の実証:実データを使って、明日から本当に使えるかをその場で検証する
- 再現可能性:進め方がパッケージ化されており、特定の人の職人芸に頼らず一定の成果が出せる
たとえば「強み起点」は、「クレーム対応が遅い」という問題から出発するのではなく、「当社の強みは常連客のリピート率の高さ。この強みをさらに伸ばすために、AI に何を任せるか?」と問い直す。問題ではなく、もっと伸ばせる余地に目を向けるからこそ、参加者の議論がポジティブに前進します。
そして進め方は、Observe(業務フロー可視化)・Shift(AI 委譲判断)・Simulate(プロトタイプ検証)・Forecast(展開計画策定)の 4 ステップ。「見て、決めて、試して、計画する」というシンプルな流れに沿って、半日で業務変革の第一周目を回します。

3.ワークショップの内容
今回のワークショップは、参加企業ごとに事前に決定した自社業務を題材に、AI BPR を体験していただくことを目的に、座学とハンズオンの2部構成で実施しました。
成果物として、参加企業様には次の2点を持ち帰っていただきました。
- 実際に動くデータ分析エージェント環境
- 「明日からどの業務をどの AI エージェントに任せ、そのことで自分たちのどんな強み・価値が強化されるのか」というストーリーがまとまった資料
当日の流れは以下の通りです。各ステップの間で参加者が迷わず進められるよう、環境のデプロイは AI エディタ Kiro との対話で完結する設計とし、事前にデータ取り込みの動作確認を済ませた状態でワークショップを開始しました。
| パート | 時間 | ステップ | 内容 |
|---|---|---|---|
| ハンズオン | 13:05〜13:20 | Step 0 | D360 デプロイ(Kiro との対話で AWS 上に環境を構築) |
| 座学 | 13:20〜13:50 | - | AI BPR・D360 紹介(セミナー形式) |
| ハンズオン | 14:00〜14:10 | Step 0.5 | D360 への CSV インポート・初期化(自社データの取り込み) |
| ハンズオン | 14:10〜15:00 | Step 1 | Observe(業務フローの可視化・業務の棚卸し) |
| ハンズオン | 15:00〜15:50 | Step 2 | Shift(AI に任せる業務を決定) |
| ハンズオン | 15:50〜16:55 | Step 3 | Simulate(D360 プロトタイプを試す) |
| ハンズオン | 16:55〜17:15 | Step 4 | Forecast(本日のまとめ/AI Agent 展開計画の作成) |
| - | 17:15〜18:00 | - | クロージング |
3-1.第1部:座学パート
ハンズオンに入る前に、AI BPR の考え方と、当日構築する Data Analytics Agent についての座学セッションを実施しました。
3-1-1.AI BPR vs 従来型BPR とその理由
AI BPR セッションの様子
座学セッションはオンラインセミナー形式で行いました。

アクセルユニバース株式会社
竹中 涼香
AUC は、AWS Japan が提唱する AI BPR について公式のトレーニングを受け、AI BPR ワークショップを提供しています。
セッションでは、従来型 BPR の3つの失敗理由(問題起点/ヒアリング往復/技術課題扱い)と、それに対して AI BPR がどう答えているかを対比しながらご説明しました。
ここで大切にしているのは、AI BPR を「今日限りのワークショップの方法論」として伝えるのではなく、参加者ご自身が社内で AI 活用を進める際の思考の型として持ち帰っていただくことです。そのため、対比はあえてシンプルな表現に絞り込み、社内で説明する場面を想像していただきながら進めました。
| 従来型 | AI BPR |
|---|---|
| 問題から始める | 強みと顧客価値から強化策を考える |
| ヒアリング→資料化の往復 | AIと対話しながらその場で成果物を作成 |
| 技術的にできるかが重視される | 実データで明日から使えるかを検証 |
| 個人のスキルに依存 | パッケージ化で属人性を低減 |
AWS Japan 様が実施した AI BPR では、すでに複数の大手企業で確かな成果が出ており、顧客満足度は 5 点満点で 4.86、参加者の 81% が「AI エージェントによってビジネスモデルが変わると確信した」と回答しています。今回のワークショップでも、こうした手法を単に説明するのではなく、参加者の皆様ご自身に体験していただくことを大切にしています。
3-1-2.本日の構築対象「Data Analytics Agent(D360)」のご紹介
ハンズオンの題材は、Discovery360(以下、D360)と呼んでいるデータ分析AIエージェントです。「データ分析の依頼を、SQL もダッシュボード操作もなしに、日本語の対話だけで完結させる」ことを目指して開発されました。
たとえば「先月、関東で離反した顧客の特徴を教えて。対策を検討して。」と入力すれば、その場で答えが返ってきます。さらに管理者向けの画面では、どのデータを使うか、どのような目的で使用するか等、自社の業務に合わせて調整することができます。


構成はシンプルで、Web の画面、AI エージェント、データベースの 3 層で成り立っています。ユーザーは聞きたいことを日本語で入力するだけ。AI が裏でデータを取得・集計し、答えを返してくれます。SQL も、複雑なダッシュボード操作も必要ありません。
Data Analytics Agent の構成
D360 はオープンソースとして公開されており、構築方法は GitHub からご確認いただけます。Discovery360 (D360) - AWS Samples
ワークショップでは、Observe で業務を見て Shift で AI に任せる範囲を決めていく思考の流れを通じて、この D360 をご自身の業務・目的に合った仕様に仕上げていく、という流れで進めました。
3-2.第2部:D360構築とAI BPRハンズオン
後半は、実際に D360 を構築しながら AI BPR の 4 ステップを体験するハンズオンを実施しました。
参加企業ごとに部屋を分け、それぞれのチームで議論を深めながら構築を進めていただきました。
今回のワークショップで大切にしたことは、「自社の環境で、自社のデータで、AI エージェントが応答する」体験を、説明や事例紹介ではなくご自身の手で作っていただくことです。実データをインポートし、AI に質問を送り、精度を調整する、というサイクルを実際に回していただきました。
各社の議論を覗いていると、印象的な変化が起こっていました。最初は「本当にうまく答えてくれるのか」と慎重に質問を送っていた方が、何回かのやりとりの後に「これなら現場で使える」と表情が変わる。ある参加企業では、Shift のステップで「これは AI に任せたいけど、ここは絶対に人が判断したい」という線引きが、メンバー間でその場で言語化されていく場面も見られました。
ハンズオンの最後には、ご自身の業務に AI エージェントを実装するための展開計画を、AI との対話を通じてその場で作成いただきました。
4.参加者の声
ワークショップ終了後、ご参加いただいた 30名の皆様にアンケートをご協力いただきました。
- ワークショップ全体満足度:90% 以上
- 進行・フォロー満足度:85%以上
- 「AI エージェント前提への業務変換は実現可能」:85%
- 「この内容を経営層に報告したい」:63%
特に注目したい部分は、最後の結果です。参加者の6割以上が「この内容を経営層に報告したい」と回答されました。自分のチームで試すだけでなく、会社全体で取り組む価値があると感じていただけたことが、このワークショップの一つの成果だと考えています。
アンケートでは以下の声をいただきました。(一部抜粋)
- 他業務でも転用できるノウハウを伺えた。
- 根本的な課題がかなりクリアになった。
- 質問に答えるだけで AI エージェントの作成・動作確認ができるのが新鮮だった。
- 言語化や可視化のスピードが、人手とは比にならない。
- AI で業務整理を進める過程そのものがとても参考になった。
「業務の言語化に AI が想像以上に役立つ」「自社の業務にどう AI を組み込むかが具体的にイメージできた」といった感想もあり、AI BPR の考え方が実体験を通して伝わっていたことがうかがえました。
また、「次のステップで必要な支援」としては、自社データを使った検証が 56%、他社事例の共有が 41%、業務部門向けデモ・勉強会が 30% と、当日の気づきを自社の実データへの適用に進めたいというご意向を、多くの方から頂戴しました。
5.組織への展開と本格導入
「ワークショップ当日は盛り上がったが、結局その後動かなかった」――AI 活用の取り組みでよく聞く話です。なぜそうなるのか。多くの場合、原因は次のどちらかに偏ってしまうことにあります。
- 計画偏重:きれいな展開計画はできたが、実装が伴わず絵に描いた餅で終わる
- 実装偏重:技術的には動くものができたが、業務との接続が弱く現場で使われない
AUCでは、AI BPRの実践とAWS上での構築、どちらも行っています。当日作成された展開計画をお客様の状況に合わせて実装フェーズに接続し、業務での定着まで伴走することができます。今回のD360はもちろん、他テーマでも同様にご支援が可能です。
一例ですが、3か月程度の PoC を通して、
- 自社データでの検証
- 活用シナリオの検討
- 業務への定着化
を進めることも可能です。
AI の活用が重要であることは感じていても、
- どこから始めればよいのか分からない
- 何を作ればよいのか分からない
- 経営層や現場を巻き込んでどう進めればいいか分からない
という方も多いと思います。
そうした段階でも、課題整理から一緒に検討させていただきます。本記事をきっかけに、AI BPR や D360 にご関心をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。