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[AWS re:Invent2025 速報] これだけ読めばデータベース関連の重要ポイントがすぐわかる!
はじめに
今年もラスベガスにて、世界最大級のクラウドカンファレンス「AWS re:Invent 2025」が開催されました! 今回はなんといっても、「AI・AIエージェントの利活用」がすべてのアップデートの中心にある印象でした。
その壮大なビジョンが注目を集める一方で、それらを根底から支えるデータ基盤、すなわちデータベースとストレージの領域においても、ビジネスに直接的なインパクトを与える極めて重要なアップデートも多数発表されました。 KeyNoteの最後のたった10分の中での駆け足の発表ではありましたが、見逃せない内容です!
本記事では、re:Invent 2025で発表されたデータベースおよび広義のデータ保管・活用に関連する重要な新機能やサービスを速報として分かりやすく解説していきます!
re:Invent 2025から読み解くAWSデータ戦略の全体的な方向性
今回のre:Invent2025のKeyNoteで大きな軸であった「AIエージェント」は、アクセスできるデータの質と量、そして速さによって賢さや使い勝手が大きく変わります。
今回のデータベース・ストレージ関連の発表は、「AI 時代にふさわしい"データ活用基盤"をクラウド側で包括的に再設計する」ものだったように感じます。
全体を俯瞰すると、今年のトレンドは以下の3つであるように感じました。
- エンタープライズ規模への対応力向上
オンプレミスで稼働する巨大なデータベースや、日々増大し続けるデータレイク。これらの大規模ワークロードをクラウドへ移行・運用する際の障壁を取り除くための容量制限の大規模な緩和が行われました。
- RDS for SQL Server/Oracleのストレージ容量が64TBから256TBへと4倍に拡張
- S3の最大オブジェクトサイズが5TBから50TBへと10倍に増加
- AI/MLワークロードのサポート強化
膨大なデータがクラウドに集約されたことで、それらがAI/MLワークロードに不可欠な「燃料」となります。今回の発表の目玉は、この燃料を最大限に活用し、生成AIアプリケーション、特にRAG(Retrieval-Augmented Generation)の構築を容易かつ低コストにする機能強化でした。
- S3 Vectorsの一般提供開始(GA)
- OpenSearch のベクトルインデックス作成のGPUアクセラレーション
- S3 Tablesのクロスリージョンレプリケーション対応
- OpenSearch ベクトルインデックス作成の10倍高速化
- 徹底したコスト最適化と運用効率化
「大規模データ活用」と「AIワークロード」を経済的に成立させるうえで、コスト最適化は不可欠です。
- Database Savings Plans の導入による統合的コスト削減
- S3 Tables のインテリジェント階層化
- RDS for SQL Server のコア数指定によるライセンス費用削減
これら3つのトレンドにより、「大規模化 → AI対応 → コスト最適化」の好循環が期待できます。
データベース関連の主要発表概要
各サービスがどのような課題を解決し、どのようなお客様にメリットをもたらすのかをまとめてみました。
| サービス名 | 概要 | 解決する課題 | 主な対象顧客 |
|---|---|---|---|
| RDS for SQL Server/Oracle |
・ストレージ最大容量を64TBから256TBに拡張 ・IOPSとIO帯域幅も4倍に向上 |
大規模なオンプレミスデータベースの移行困難性や、クラウド上でのスケーラビリティの限界 | 大規模なSQL ServerやOracleデータベースをオンプレミスで運用している企業 |
| RDS for SQL Server |
・インスタンスのvCPU数を指定可能に ・SQL Server Developer Editionをサポート |
Microsoft SQL Serverの高額なCPU単位のライセンスコスト、開発・テスト環境のコスト | SQL Serverのライセンスコストを最適化したい企業 |
| Database Savings Plans | ・データベースエンジン、サービスをまたがる節約プラン。最大35%のコスト削減。 | データベースエンジンごとにコミットメントを管理する複雑さと、コスト削減機会の逸失 | 複数のAWSデータベースサービス(RDS, Aurora, DynamoDBなど)を利用している企業 |
| S3 & S3 Tables | ・最大オブジェクトサイズが50TBに! | データレイク用のデータなど、巨大な単一ファイルの扱い | 大規模なデータレイクや分析基盤を運用している企業 |
| S3 Tables |
・S3 Tablesのインテリジェント階層化対応 ・クロスリージョンレプリケーションに対応 |
データの利用頻度に応じたストレージコスト管理自動化 DR構成が複雑、データがないリージョンからのクエリが遅く一貫したパフォーマンスが得られない |
大規模なデータレイクや分析基盤を運用している企業 グローバル企業のマルチリージョン分析・サービス運用、DR対策 |
| S3 Vectors | ・ベクトルデータをS3にネイティブに保管、クエリが可能に。 | 生成AI/RAGアプリケーションにおけるベクトルデータ管理のコストと複雑性 | 生成AIやセマンティック検索アプリケーションを開発・運用する企業 |
| Amazon OpenSearch Service |
・ベクトルインデックス作成時にGPUアクセラレーションを利用可能に。 インデックス作成が10倍高速化、コストは1/4に。 |
大量のベクトルデータに対するインデックス作成の遅さと高コスト | S3 Vectorsと連携し、低レイテンシーなベクトル検索を必要とする開発者 |
| EMR Serverless Storage | EMR Serverlessクラスタのローカルストレージをプロビジョニング・管理する必要がなくなった。 | ビッグデータ処理におけるストレージ管理のオーバーヘッド | EMR Serverlessを利用してビッグデータ処理の運用を簡素化したい企業 |
各発表の重要ポイントをブレイクダウン
1. データベース移行とコスト最適化 (RDS)
1.1. ストレージ容量と性能の飛躍的向上
RDS for SQL Server/Oracle の最大ストレージ容量が64TB → 256TBに拡張され、IOPS・IO帯域幅も4倍に向上。オンプレ移行の最大障壁だったサイズ制限がほぼ解消されました。
1.2. RDS for SQL Serverライセンスコストの削減
- RDS for SQL Serverの一部インスタンスタイプにてvCPU数の任意指定が可能に!
これまでは「CPUはそこまでいらないけど、メモリは確保したい/ネットワーク帯域は欲しい」といった場合、十分な容量を持つインスタンスタイプを選択し(自動的にvCPU数も多くなる)、 そのインスタンスタイプのvCPU数に応じたライセンス費用を支払う必要がありました。
今回の発表により、選択するインスタンスタイプはそのままで、vCPU数を適正に絞ることで、SQL Serverライセンス費用を抑えることができるようになりました。

- Developer Editionサポートにより、ライセンス無料の開発環境をAWS上で実現可能に!
2. AI時代のデータ活用を加速 (S3 & OpenSearch)
2.1. ベクトルデータ管理の革新
プレビュー版として注目を集めていたS3 VectorsがGA(一般提供開始)となりました。
S3 Vectorsは、生成AIの頭脳となるベクトルデータを、多くの開発者が使い慣れた信頼性の高くコストの低いS3に保存・クエリできる機能です。
従来はベクトルの保管は専用のデータベースの構築・運用が必要でした。
例えば Pinecone(商用 SaaS)、Milvus(OSS だがクラスタ管理が必須)、Weaviate(SaaS/OSS)といったサービスの利用が考えられますが、常時稼働サーバーの費用、スケール・容量の管理、障害対応などのコストが発生していました。
S3 Vectors では、データベースそのものを維持する必要がなく、「S3 ベクトルバケット」に保存するだけでよいため、企業はデータの活用だけに集中できます。
これにより、AI導入の初期コストと運用負担が大幅に下がり、AWSは「最大90%のコスト削減が可能」、とうたっています。
初期投資を少なく機械学習・AI性能向上に挑戦できるチャンスですね!
2.2. 高速なベクトル検索基盤
OpenSearch Serviceでは、ベクトルインデックス作成時にGPUアクセラレーションが利用可能になり、処理速度が10倍高速化し、コストは1/4に抑制されるように改善が入りました。
上述のS3 Vectorsの低コストなデータストアと、OpenSearch Serviceの高速な検索エンジンを組み合わせることで、最先端のAI検索アプリケーションの構築が、より多くの開発者にとって現実的なものになりそうですね。
3. データベースコストの統合的管理 (Savings Plans)
3.1. Database Savings Plans
もともとコンピューティング向けの「Savings Plans」は存在していましたが、今回はデータベースサービス横断の「Database Savings Plans」がでました!
Database Savings PlansはRDS、Aurora、DynamoDBなど、複数のAWSデータベースサービスにまたがって適用可能な購入節約オプションです。
1年または3年の期間で一定の利用量をコミットすることで、オンデマンド料金と比較して最大35%のコスト削減を実現できます。
従来はエンジンごとにリザーブドインスタンスなどを購入し個別の最適化が必要でしたが、Database Savings Plansによりコミットメント管理が大幅に簡素化されます。
利用状況の変動にも柔軟に対応しやすく、予測可能で継続的なコスト削減が容易になったことが大きなメリットです。
まとめ
AWSのデータ戦略は「AI対応」「大規模化」「コスト最適化」の3つに集約されています。これらの進化は、ビジネスを次のステージへ進める強力な武器となります。
- オンプレ巨大DBの移行
本記事では取り扱っていませんが、インフラ・アプリケーション全般や権限管理に対するセキュリティ強化の機能も今回のre:inventにて複数発表されています。
容量の問題やセキュリティ上の懸念で、データベースのクラウド移行を見送っている場合、これを期に再考してみるのはいかがでしょうか。(大規模でなくてももちろん大歓迎です!) - 生成AIを活用した新サービス開発や社内業務効率化
S3 VectorsとOpenSearchにより、インフラに大きく投資をせずにPoCをやってみることが可能になりました。社内のデータを活用して、RAG / AI 検索基盤構築を試してみたいという場合の参入障壁が大きく下がったのでこれを期に取り組んでみるのはいかがでしょうか。
- クラウドTCOの最適化
Database Savings Plans などの新機能でTCO削減が現実的になりました。
現在の利用状況を分析し、最適なプランを適用することで実現可能なコスト削減に取り組むのはいかがでしょうか。
当社では、データベース移行・最適化、データレイク構築、AI検索基盤、コスト最適化など幅広くご支援可能です。ぜひお気軽にご相談ください。