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AWS Partner Summit 参加レポート|生成AI導入を本番活用に導く3つの共通点とは

- はじめに:なぜ生成AIはPoCで止まりやすいのか
- セッション概要:本番活用企業に見える共通点とは
- 本番導入できた企業に共通する3つの特徴
- 技術導入の前提にあるべき"2つの視点"
- まとめ:PoCを超えるには、文化と仕組みの設計から
1.はじめに:なぜ生成AIはPoCで止まりやすいのか
先日AWS Patner Summit 2025に参加し、「100以上の生成AI導入事例から学ぶPoCを本番利用に導く秘訣」というセッションを聴講してきました。 生成AIの活用は注目を集めていますが、現場では「PoC(概念実証)までは進めたが、本番運用には至っていない」といった悩みを抱える企業も多く見受けられます。 セッションでは、本番導入に進めた企業の共通点について、100件を超える導入事例をもとに整理・分析された内容が紹介されていました。
本記事では、PoCを超えて生成AIを業務に定着させるための"3つの共通点"と、"それを支える組織的な仕組み"についてご紹介します。
2.セッション概要:本番活用企業に見える共通点とは
「100以上の生成AI事例から学ぶPoCを本番利用に導く秘訣」では、AWSが関与した数多くの生成AI導入プロジェクトの中から、本番活用に至った企業の成功要因が紹介されました。 特に印象的だったのは、「本番化に成功した企業は、技術的優位性よりも、組織の進め方や評価の仕組みに違いがあった」という点です。 私たち自身、日々お客様と向き合う中で、PoCが終わった後の"次のステップ"をどう設計するかが導入の分かれ道であると実感しています。
セッションでは、PoCを超えて成果を出した企業に共通する要素として、次の3つが挙げられました。
3. 本番導入できた企業に共通する3つの特徴
(1)顧客起点文化:効果を定量的に測る仕組みがある
成功企業に共通していたのは、生成AIの導入目的が「業務課題の解決」や「顧客価値の向上」といった明確なテーマに基づいていたことです。 つまり、「生成AIの導入が、具体的な業務課題や顧客価値向上といった目的と結びついておらず、『なんとなく使ってみた』というレベルで止まってしまうケースが多い」ようです。 目的や活用シナリオが曖昧なままだと、PoCの意義が不明瞭になり、結果としてプロジェクトは停滞しがちです。 さらに、成功企業ではその効果を定量的に測定する仕組みが整っており、導入の是非を数字で判断できる文化が社内に定着していました。 例えば、「対応時間の短縮率」「生成コンテンツの品質改善度」といった具体的なKPIを設け、取り組みの価値を検証していました。
(2)小規模なチーム:素早い意思決定と実験を可能にする体制
多くの成功事例では、数名からなる小規模なチームでプロジェクトがスタートしていました。 スピード感を持って動けるこの体制は、部門間の壁を越えて柔軟に意思決定できる点が特徴です。
私たちも、開発現場では少人数での検証フェーズを設けることがありますが、こうした体制の重要性を改めて認識しました。 試行錯誤を前提としながらも、成果が見えた段階でスケールさせる柔軟性が鍵になります。
(3)頻繁な実験:小さく始めて早く学ぶPDCA文化
本番導入に成功した企業は、最初から完璧な成果を求めず、まず動かしてみることを重視していました。
「やってみて、振り返って、すぐ改善する」というサイクルを短期間で何度も回すことで、生成AIの精度や業務適合度を高めていく姿勢が印象的でした。 この"実験と学習の反復"が、PoCから脱却するための強力な推進力になっていました。
4. 技術導入の前提にあるべき"2つの視点"
PoCを突破し、本番運用へとつなげるには、3つの共通点だけでなく、技術を受け入れる側の「組織的な仕組み」と「導入の順序」に対する明確な方針が必要です。
(1)新技術を受け入れる仕組みがあるか
生成AIのような新技術を取り入れるには、業務や人材、評価制度といった社内インフラの準備が不可欠です。 また、新しい技術を前向きに試そうとする姿勢や、それを歓迎する社内文化、変化を楽しむ人材がいることも、導入を前に進める大きな推進力となります。
制度や体制だけでなく、そうした「人と文化」の土壌があるかも、技術定着の成否を分ける要素の一つです。
例えば:
- 小さく試す場(PoC環境)と、成果を検証する制度
- ナレッジ共有やガバナンス整備
私たちもこれまで、PoCを一度きりの取り組みに終わらせないためには、こうした仕組みをプロジェクト設計段階から組み込むことが重要だと考えています。
(2)ユースケース起点で技術を当てはめる発想
導入がうまくいった企業の多くは、「何を実現したいか」が明確で、そのうえで技術を当てはめていました。 この発想は、自社の顧客業務を深く理解する必要がある私たちのような開発会社にとっても、非常に重要です。 ユースケース起点の設計が、結果としてデータ活用や継続的価値創出の連鎖を生み出します。
また、生成AIプロジェクトを実行に移すうえでは、「スコープ設計」、「関係者の巻き込み」、「失敗前提でのスピード感ある進行」など、具体的な進め方にも工夫が求められます。
この点については、私たちも以前から重視しており、生成AI導入を現場でどのように進めていくかという観点からまとめたブログを公開しています。
今回のセッション内容とも重なる点が多くありますので、ぜひあわせてご一読いただければと思います。
▶︎ 生成AI導入案件の30%が中止見込み、従来システム導入と大きく異なるアプローチ
導入戦略と具体的な進め方の両輪を意識することが、生成AI活用の成功確率を高める重要なポイントだと感じました。
5. まとめ:PoCを超えるには、文化と仕組みの設計から
今回のセッションを通じて改めて感じたのは、PoCで止まらない企業には「特別な技術力」ではなく、「業務にフォーカスした明確な目的」と 「小さく早く動く文化」、そして「評価と継続を支える仕組み」 があったということです。 PoCを繰り返すこと自体が目的化してしまうのではなく、「成果が出る仕組み」をどう作るかを設計することが、生成AIを本番活用へとつなげる鍵になります。
<今すぐ社内で検討できる3つのアクション>
導入目的を業務課題ベースで再定義する
「誰の、どんな業務を、どう改善したいのか」を明確にする小規模な横断チームで短期間の実験サイクルを始める
少人数・短期間でまずは試す体制をつくる定量的な効果測定の枠組みを導入し、継続判断を支える
KPIや評価軸を事前に設定し、PoCから学びを次へ活かす
私たちアクセルユニバースでは、生成AIを活用した業務改善のPoC支援から本番導入・運用までを、ユースケース設計と組織課題の両面からサポートしています。
今後もこうした学びを活かし、お客様のビジネスに根ざした生成AI活用を支援してまいります。
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